注
(1) 「日英同盟」本文[外務省発表原文]
[前文]
日本国政府及大不列顛国政府ハ偏二極東二於テ現状及全局ノ平和ヲ維持スルコトヲ希望シ且ツ清帝国及韓帝国ノ独立ト領土保全トヲ維持スルコト及該二国二於テ各国ノ商工業ヲシテ均等ノ機会ヲ得セシムルコトニ関シ特二利益関係ヲ有スルヲ以テ茲ニ左ノ如ク約定セリ
[第一条]
両締約国ハ相互二清国及韓国ノ独立ヲ承認シタルヲ以テ該二国敦レニ於テモ全然侵略的趨向二制セラルルコトナキヲ声明ス 然レトモ両締約国ノ特別ナル利益二鑑ミ即チ其利益タル大不列顛国二取リテハ主トシテ清国二関シ又日本国二取リテハ其清国二於テ有スル利益二加フルニ韓国二於テ政治上拉二商業上及工業上格段二利益ヲ有スルヲ以テ両締約国ハ若シ右等利益ニシテ列国ノ侵略的行動二因リ若クハ清国又ハ韓国二於テ両締約国敦レカ其臣民ノ生命及財産ヲ保護スル為メ干渉ヲ要スヘキ騒動ノ発生二因リテ侵迫セラレタル場合ニハ両締約国敦レモ該利益ヲ擁護スル為メ必要欠クヘカラサル措置ヲ執リ得ヘキコトヲ承認ス
[第二条]
若シ日本国又ハ大不列顛国ノ一方カ上記各自ノ利益ヲ防護スル上二於テ列国ト戦端ヲ開クニ至リタル時ハ他ノ一方ノ締約国ハ厳正中立ヲ守リ併セテ其同盟国二対シテ他国カ交戦二加ハルヲ妨クルコトニ努ムヘシ
[第三条]
上記ノ場合二於テ若シ他ノ一国又ハ数国カ該同盟国二対シテ交戦二加ハル時ハ他ノ締約国ハ来リテ援助ヲ与へ、協同戦闘二当ルヘシ講和モ亦該同盟国ト相互合意ノ上二於テ之ヲ為スヘシ
[第四条]
両締約国ハ敦レモ他ノ一方ト協議ヲ経スシテ他国卜上記ノ利益ヲ害スヘキ別約ヲ為ササルヘキコトヲ約定ス
[第五条]
日本国若クハ大不列顛国二於テ上記ノ利益カ危殆二迫レリト認ムル時ハ両国政府ハ相互二充分二且ツ隔意ナク通告スヘシ
[第六条]
本協約ハ調印ノ日ヨリ直ニ実施シ該期日ヨリ五箇年間効力ヲ有スルモノトス 若シ右五箇年ノ終了ニ至ル十二箇月前ニ締約国ノ孰レヨリモ本協約ヲ廃止スルノ意思ヲ通告セサル時ハ本協約ハ締結国ノ一方カ廃棄ノ意思ヲ表示シタル当日ヨリ一箇年ノ終了ニ至ル迄ハ引続キ効力ヲ有スルモノトス 然レトモ右終了期日ニ至リ一方カ現ニ交戦中ナルトキハ本同盟ハ講和結了ニ至ル迄当然継続スルモノトス
以下は、英文
Article 1. The High Contracting parties, having mutually recognized the independence of China and Korea, declare themselves to be entirely uninfluenced by aggressive tendencies in either country. having in view, however, their special interests, of which those of Great Britain relate principally to China, whilst Japan, in addition to the interests which she possesses in China, is interested in a peculiar degree, politically as well as commercially and industrially in Korea, the High Contracting parties recognize that it will be admissable for either of them to take such measures as may be indispensable in order to safeguard those interests if threatened either by the aggressive action of any other Power, or by disturbances arising in China or Korea, and necessitating the intervention of either of the High Contracting parties for the protection of the lives and properties of its subjects.
Article 2. Declaration of neutrality if either signatory becomes involved in war through Article 1.
Article 3. Promise of support if either signatory becomes involved in war with more than one Power.
Article 4. Signatories promise not to enter into separate agreements with other Powers to the prejudice of this alliance.
Article 5. The signatories promise to communicate frankly and fully with each other when any of the interests affected by this treaty are in jeopardy.
Article 6. Treaty to remain in force for five years and then at one years’ notice, unless notice was given at the end of the fourth year.
この条文について、吉田茂が興味あるコメントを出している。
「この条約のエッセンスは第一条にある。日英両国ともここに最大の力点をおいて交渉した。条文のうち『列国ノ侵略的行動二因リ』というのが第一のポイントである。
つまり、中国または韓国に(両方とも香港や日本本土への侵略を念頭においていないことに注意)列国(ヨーロッパ五大国をさし具体的にはロシアであり副次的にフランス)が、先制攻撃をして以降、防衛義務が生じる。
第二条について日本語(外務省)訳は訳しすぎると思われるが、いかがだろうか?
そして、この条約締結公表の一年三カ月後、ロシアは韓国領内龍岩浦に砲台を建設したわけである。これは当時のあらゆる角度からみてロシアの韓国への侵略であり、この条約の第一条に該当する。
フランスは直ちにロシアに注意を喚起し、砲台の建設自体は中途半端なものとして終わった。そして、この事件は『鴨緑江事件』として直ちにヨーロッパで問題となった。ニコライ二世がこの条約を知りながらなぜ、龍岩浦事件を引き起こしたのか謎とされるところである。
第二のポイントは中国と韓国における暴動について規定していることである。すなわち、イギリスにとって、この条約の最大の眼目は揚子江流域に居住するイギリス人の保護のため、日本兵を期待することにあった」(http://ww1.m78.com/sib/anglojapanesetreaty.html)。
(2) 憲政本党は、一八九八年に進歩党と分かれてできたものである。この年、進歩党は憲政党と憲政本党に分裂したのであるが、当時の新聞は、憲政本党を旧名の「進歩党」と呼ぶのが習慣であった(片山[二〇〇三]、注9、七六六ページ)。