(17) グイド・ヘルマン・フリドリン・フルベッキ(フェルベック、1830〜98)は、オランダの法学者・神学者、宣教師。オランダ・ザイスト(Zeist)出身。ユトレヒト(Utrecht)で工学を学んだ。日本では発音しやすいようフルベッキと名乗った。一八五九年に長崎に上陸。長崎では洋学校の済美館(せいびかん)の英語教師を勤め、一八六四年に校長となる。一八六六年、長崎に設けられた佐賀藩の致遠館(ちえんかん)で、大隈重信や副島種臣(そえじま・たねおみ)らを育成した。一八六九年、上京して開成学校の設立を助け、のち大学南校(東京大学の前身)の教頭となった。その後、太政官顧問を経て、東京一致神学校(明治学院の前身)や学習院の講師となる。一八八六年、明治学院の創設時に理事として関わり、明治学院神学部教授、明治学院理事会議長などを歴任した。一八八七年、明治学院の教授時代にフルベッキは、A Synopsis of all the Japanese Verbs with Explanatory Text and Practical Applicationという日本語の動詞活用の本を横浜の「ケリー社」(Kelly & Walsh)から出版している。
一八六九年、明治政府の顧問、つまり、「お雇い外国人」となった。大隈重信に渡した文書で、信教の自由をはじめ、諸々の理解のため政府高官が直接欧米を視察するように建白したもので、岩倉使節団の米欧派遣の素案となった。また太政官顧問としてのフルベッキは主に各国の法律の翻訳や説明に当たった。
一八八七年一二月三一日、『旧約聖書』の日本語訳が完成した。この中の「詩篇」と「イザヤ書」はフルベッキの名訳と言われている(http://shiryokan.meijigakuin.jp/archive/people/verbeck)。
(18) 安中教会は一八七八年、新島襄から洗礼を受けた湯浅治郎はじめ三〇名によって創設された(初代の牧師は海老名弾正)。群馬県では最初のキリスト教会であり、同時に、日本人の手により創立された日本で最初のキリスト教会でもある(http://www8.wind.ne.jp/a-church/profile/index.html)。安中は新島襄の生誕の地。
安中教会創設者の湯浅治郎は、安中の醤油醸造業有田屋の当主。自由民権運動に参加。新島の没後、同志社の経営・発展に尽力する。また政府支援による日本組合教会の朝鮮伝道については柏木義円・吉野作造等とともに反対した。出版社警醒社の発起人の一人。後妻の初子は徳富兄弟の姉。詩人で聖書学・図書館学の湯浅半月は弟。国際基督教大学初代学長の八郎は子。一九一六年、安中教会に東大生の矢内原忠雄(後、戦後二代目の東大総長、東大出版会第二代会長)が訪れている。矢内原は新島襄、内村鑑三、柏木義円を生んだ「上州は日本に対して誇るに足る。」とその日記に記している(http://d.hatena.ne.jp/ya022978/20110419/1303221342)。
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