各州政府は、公共料金収入にリンクしたデリバティブ債券なども大量に発行している。それゆえに、州財政が破綻すれば、そうした州のデリバティブも危機に陥る。こうして、米国の金融危機は次の段階に向かうことになる。
〇九年七月一〇日に発足した新GMは、政府が六割も出資している。今後三年以内に米国内の工場数を四七から三四に縮小、六万二〇〇〇人の労働者を四万人にまで減らす。新会社の年間予想販売台数は三九〇万台弱に半減する。販売台数で世界の第一位から八位に急転直下の後退である。
ところが、米国の金融界は、巨額の公的資金で救済され、巨額のボーナス文化が維持されている。ニューヨーク州のクオモ司法長官は、「分別のない金融機関のボーナス文化、どちらに転んでも損しない」と非難した。シティグループやメリルリンチなど米大手銀九行は、〇八年に総額三二六億ドルのボーナスを支払った。公的資金一七五〇億ドルを受け取りながらのことであった。〇九年のボーナス支払額はさらに膨らんだ。ゴールドマン・サックスはすでに〇九年上期に報酬・手当を三三%も増やした。
オバマ米大統領が、〇九年六月一七日に発表した金融規制改革案は、ファンドのメンバーのSEC(米証券取引委員会)への登録を決めただけのものである。しかも、登録情報の利用は監督機関に限られ、一般公開はされない。また、自己資本比率の下限制限、レバレッジ比率の規制なども適用されない。銀行に対しては、彼らとの取引の失敗でシステミック・リスクの連ならないように、十分な資本準備金の確保を求めただけである。
膨大な税金収入を投入しながら、労働者の首切りと金融界への過剰保護によって米国社会が安定することは不可能である。
米財務省は、〇九年七月一三日、六月の財政赤字が九四三億ドル強となり、〇九年度会計年度(〇八年一〇月から)での累積赤字が一兆八六三億ドル弱とすでに一兆ドルを超してしまった。赤字が年間で一兆ドルを超すのは初めてである。〇八年度の財政赤字は四五五〇億ドルであった。
これほどの膨大な資金を投入しても、米国の実体経済は改善していないのである。
膨大なドル散布政策を支えているのは、中国である。中国の中央銀行である人民銀行は、〇九年七月一五日、六月末の外貨準備額が二兆一三二〇億ドル弱になったと発表した。第二位の日本の二倍以上である。準備額の七割はドルである。米国債保有額は、八〇一五億ドルであり、二位の日本の六七七二億ドルを大幅に上回る。一年で二九四七億ドルも増加させたのである。
こうした状況を反映して、第一回米中戦略・経済対話が〇九年七月二七日、ワシントンで開催された。中国側は、副首相の王岐山、国務員の戴秉国、米国務長官のヒラリー・クリントン、米財務長官のティモシー・ガイトナーが開会式に参列した。中国側の出席者はは一五〇人の高官であり、うち、二四名は大臣級であった。
この会談でクリントン国務長官は米中二国が同舟の関係にあると語った。クリントンとガイトナーは、米中を除いて世界の重要問題は解決できないとまで語ったのである。米国は、米中関係をG2と表現したのである。つまり、時代は、パックス・シノ・アメリカーナの時代になりつつある。
それを証明するかのように、オバマ政権は、二〇一〇年の大統領選の共和党候補の噂の高い現役のユタ州知事、ジョン・ハンツマンを駐中米大使に〇九年五月一六日に指名した。ハンツマンは、敬虔なモルモン教徒のの宣教師であり、台湾で伝導したこともあり、流暢な中国語を話し、中国の少女を養子にしている。ハンツマンは、洪博培(Hong Bopei)という中国名を名乗っているほど中国通である。ハンツマンは、商務次官補代理(東アジア・太平洋担当)、駐シンガポール大使、通商代表部次席代表などを経て〇四年にユタ州現職に初当選し、〇九年で二期目であった。
財務長官ティモシー・ガイトナーも、米国の対中政策のキーマンになりそうである。ガイトナーの父は、中国でフォード財団中国事務所設立責任者で、フォード財団の主任研究員であった。ガイトナーは、父親の仕事の関係で、日本、中国、タイ、インドなどで暮したこともある。ダートマス大学でアジア研究、ジョンズ・ホプキンス大学大学院で日本と中国の研究をした。北京大学への留学経験もある。中国語に堪能である。中国共産党人脈も大きなものがある。
彼の二〇年以上のキャリアには民間勤務の経験がないが、ゴールドマン・サックスとの関係は非常に濃密である。ゴールドマン・サックスは政府要人であったとき、彼は重要な地位にゴールドマン・サックスOBを多数つけた。
〇八年七月には、中国工商銀行の発行株式時価総額がシティグループを抜いて、金融業で世界一になった。その銀行の取締役会名簿には、ゴールドマン・サックスの大物が二人いる。
一人は、クリストファー・コールである。彼は、〇六年六月から同行の重役を務めている。ゴールドマン・サックスのファイナンス投資部門議長でもある。
もう一人が、ジョン・ソートンである。彼は、〇五年一〇月から同行社外重役を務めている。一九八三年には、ゴールドマン・サックスの共同COO(ポールソン元財務長官と組む)であった。現在も重役である。
ソーントンンは、清華大学の教授でもある。ソーントンは、ゴールドマン・サックスのヨーロッパ拠点を強化し、M&Aを盛んに手掛けてきたし、九五〜九六年には、ロンドンのゴールドマン・サックス・インターナショナルの共同会長、九六〜九八年には、ゴールドマン・サックス・アジア会長であった。この時期は、まさにアジア通貨危機の真っ最中であり、ソーントンは、ゴールドマン・サックスの支店網を強化することに成功した。清華大学の顧問委員会には、中国投資公司(CIC)の楼継偉CEOとか、ビルダーバーガーの龍永図(ボアオ国際フォーラム理事長)、スティグリッツ、BPの執行理事のイエン・コン、国務院発展研究センター常務幹事の呉敬?らが名を連ねている。
CICは、中国政府系投資ファンドである。〇七年に北京で組成世界第四位の政府系ファンドである。〇七年には三〇億ドルでブラックストーングループい、五億ドルでモルガン・スタンレーに資本参加している。
二兆ドルを超す中国政府の外貨準備額の運用をCICが任されているのである。CICは、西側政府に影響力のある産業に資本参加することを目指すものと理解されている。航空会社などがそれである。あるいは、中国に大ききな投資をしている外資系企業もその対象である。会長の楼は大臣級扱いである。他にも、彼は、国家開発改善委員会などの重要な部局の責任者でもある。
それはともかく、米系投資銀行が中国の国家ファンドにノウハウを提供していることだけは確かである。〇九年三月、中国のメディアはCICがいよいよ不動産とか資源などの実物資産に投資するようになったことを伝えた。
じつは、オバマ政権になって、時代は、米国の金融と中国の政府系金融とが手を取り合う金融におけるパックス・サイノ・アメリカーナに突入したのである。
大量の米国債は買わされるが、その運用がほとんど許されていない日本に反して、中国は大量の米国債を武器として米国の金融機関そのものを買収しようとしているのである。その意味で、今後の日本の経済は、金融、エネルギー資源、農産物市場で、米中の金融連合軍の餌食になることは必須である。
外国による米国債保有額は、〇九年五月末時点で三兆二九三一億ドルあり、一年間で六九六八億ドル増えた。国債買い付けを増やしたのは、中国が二九四七億ドル、日本が一〇一九億ドル、この二国の保有増が図抜けて大きい。二国だけで増額の五七%も占めている。国別の増減額を見ると以下のようになる。
カリブ(+八九三億ドル)、石油輸出国(+二八七億ドル)、英国(−七四億ドル)、ブラジル(−二四三億ドル)、ロシア(+六〇八億ドル)、ルクセンブルグ(+二一一億ドル)、香港(+三二八億ドル)、台湾(+三六八億ドル)、スイス(+二一八億ドル)、ドイツ(+一〇三億ドル)、アイルランド(三五〇億ドル)、シンガポール(+九〇億ドル)、インド(二〇八億ドル)、韓国(−一〇億ドル)、メキシコ(−八〇億ドル)、トルコ(−一億ドル)、ノルウェー(一〇八億ドル)、タイ(−六〇億ドル)、フランス(+二五九億ドル)、イスラエル(+一三七億ドル)、エジプト(+六〇億ドル)、イタリア(+五五億ドル)、オランダ(+七億ドル)、ベルギー(+三三億ドル)チリ(+三六億ドル)、スウェーデン(−二億ドル)、マレーシア(+三一億ドル)、コロンビア(+四三億ドル)、フィリピン(++二八億ドル)、カナダ(−一八八億ドル)、その他(+四〇一億ドル)。
ほとんどの国が米国債保有を増やして米国財政を支援してることが明らかであるが、それにしても総じて先進諸国が米国債に冷たく、日中だけが飛び抜けて大きいことが分かる。
〇九年七月一〇日に発足した新GMは、政府が六割も出資している。今後三年以内に米国内の工場数を四七から三四に縮小、六万二〇〇〇人の労働者を四万人にまで減らす。新会社の年間予想販売台数は三九〇万台弱に半減する。販売台数で世界の第一位から八位に急転直下の後退である。
ところが、米国の金融界は、巨額の公的資金で救済され、巨額のボーナス文化が維持されている。ニューヨーク州のクオモ司法長官は、「分別のない金融機関のボーナス文化、どちらに転んでも損しない」と非難した。シティグループやメリルリンチなど米大手銀九行は、〇八年に総額三二六億ドルのボーナスを支払った。公的資金一七五〇億ドルを受け取りながらのことであった。〇九年のボーナス支払額はさらに膨らんだ。ゴールドマン・サックスはすでに〇九年上期に報酬・手当を三三%も増やした。
オバマ米大統領が、〇九年六月一七日に発表した金融規制改革案は、ファンドのメンバーのSEC(米証券取引委員会)への登録を決めただけのものである。しかも、登録情報の利用は監督機関に限られ、一般公開はされない。また、自己資本比率の下限制限、レバレッジ比率の規制なども適用されない。銀行に対しては、彼らとの取引の失敗でシステミック・リスクの連ならないように、十分な資本準備金の確保を求めただけである。
膨大な税金収入を投入しながら、労働者の首切りと金融界への過剰保護によって米国社会が安定することは不可能である。
米財務省は、〇九年七月一三日、六月の財政赤字が九四三億ドル強となり、〇九年度会計年度(〇八年一〇月から)での累積赤字が一兆八六三億ドル弱とすでに一兆ドルを超してしまった。赤字が年間で一兆ドルを超すのは初めてである。〇八年度の財政赤字は四五五〇億ドルであった。
これほどの膨大な資金を投入しても、米国の実体経済は改善していないのである。
膨大なドル散布政策を支えているのは、中国である。中国の中央銀行である人民銀行は、〇九年七月一五日、六月末の外貨準備額が二兆一三二〇億ドル弱になったと発表した。第二位の日本の二倍以上である。準備額の七割はドルである。米国債保有額は、八〇一五億ドルであり、二位の日本の六七七二億ドルを大幅に上回る。一年で二九四七億ドルも増加させたのである。
こうした状況を反映して、第一回米中戦略・経済対話が〇九年七月二七日、ワシントンで開催された。中国側は、副首相の王岐山、国務員の戴秉国、米国務長官のヒラリー・クリントン、米財務長官のティモシー・ガイトナーが開会式に参列した。中国側の出席者はは一五〇人の高官であり、うち、二四名は大臣級であった。
この会談でクリントン国務長官は米中二国が同舟の関係にあると語った。クリントンとガイトナーは、米中を除いて世界の重要問題は解決できないとまで語ったのである。米国は、米中関係をG2と表現したのである。つまり、時代は、パックス・シノ・アメリカーナの時代になりつつある。
それを証明するかのように、オバマ政権は、二〇一〇年の大統領選の共和党候補の噂の高い現役のユタ州知事、ジョン・ハンツマンを駐中米大使に〇九年五月一六日に指名した。ハンツマンは、敬虔なモルモン教徒のの宣教師であり、台湾で伝導したこともあり、流暢な中国語を話し、中国の少女を養子にしている。ハンツマンは、洪博培(Hong Bopei)という中国名を名乗っているほど中国通である。ハンツマンは、商務次官補代理(東アジア・太平洋担当)、駐シンガポール大使、通商代表部次席代表などを経て〇四年にユタ州現職に初当選し、〇九年で二期目であった。
財務長官ティモシー・ガイトナーも、米国の対中政策のキーマンになりそうである。ガイトナーの父は、中国でフォード財団中国事務所設立責任者で、フォード財団の主任研究員であった。ガイトナーは、父親の仕事の関係で、日本、中国、タイ、インドなどで暮したこともある。ダートマス大学でアジア研究、ジョンズ・ホプキンス大学大学院で日本と中国の研究をした。北京大学への留学経験もある。中国語に堪能である。中国共産党人脈も大きなものがある。
彼の二〇年以上のキャリアには民間勤務の経験がないが、ゴールドマン・サックスとの関係は非常に濃密である。ゴールドマン・サックスは政府要人であったとき、彼は重要な地位にゴールドマン・サックスOBを多数つけた。
〇八年七月には、中国工商銀行の発行株式時価総額がシティグループを抜いて、金融業で世界一になった。その銀行の取締役会名簿には、ゴールドマン・サックスの大物が二人いる。
一人は、クリストファー・コールである。彼は、〇六年六月から同行の重役を務めている。ゴールドマン・サックスのファイナンス投資部門議長でもある。
もう一人が、ジョン・ソートンである。彼は、〇五年一〇月から同行社外重役を務めている。一九八三年には、ゴールドマン・サックスの共同COO(ポールソン元財務長官と組む)であった。現在も重役である。
ソーントンンは、清華大学の教授でもある。ソーントンは、ゴールドマン・サックスのヨーロッパ拠点を強化し、M&Aを盛んに手掛けてきたし、九五〜九六年には、ロンドンのゴールドマン・サックス・インターナショナルの共同会長、九六〜九八年には、ゴールドマン・サックス・アジア会長であった。この時期は、まさにアジア通貨危機の真っ最中であり、ソーントンは、ゴールドマン・サックスの支店網を強化することに成功した。清華大学の顧問委員会には、中国投資公司(CIC)の楼継偉CEOとか、ビルダーバーガーの龍永図(ボアオ国際フォーラム理事長)、スティグリッツ、BPの執行理事のイエン・コン、国務院発展研究センター常務幹事の呉敬?らが名を連ねている。
CICは、中国政府系投資ファンドである。〇七年に北京で組成世界第四位の政府系ファンドである。〇七年には三〇億ドルでブラックストーングループい、五億ドルでモルガン・スタンレーに資本参加している。
二兆ドルを超す中国政府の外貨準備額の運用をCICが任されているのである。CICは、西側政府に影響力のある産業に資本参加することを目指すものと理解されている。航空会社などがそれである。あるいは、中国に大ききな投資をしている外資系企業もその対象である。会長の楼は大臣級扱いである。他にも、彼は、国家開発改善委員会などの重要な部局の責任者でもある。
それはともかく、米系投資銀行が中国の国家ファンドにノウハウを提供していることだけは確かである。〇九年三月、中国のメディアはCICがいよいよ不動産とか資源などの実物資産に投資するようになったことを伝えた。
じつは、オバマ政権になって、時代は、米国の金融と中国の政府系金融とが手を取り合う金融におけるパックス・サイノ・アメリカーナに突入したのである。
大量の米国債は買わされるが、その運用がほとんど許されていない日本に反して、中国は大量の米国債を武器として米国の金融機関そのものを買収しようとしているのである。その意味で、今後の日本の経済は、金融、エネルギー資源、農産物市場で、米中の金融連合軍の餌食になることは必須である。
外国による米国債保有額は、〇九年五月末時点で三兆二九三一億ドルあり、一年間で六九六八億ドル増えた。国債買い付けを増やしたのは、中国が二九四七億ドル、日本が一〇一九億ドル、この二国の保有増が図抜けて大きい。二国だけで増額の五七%も占めている。国別の増減額を見ると以下のようになる。
カリブ(+八九三億ドル)、石油輸出国(+二八七億ドル)、英国(−七四億ドル)、ブラジル(−二四三億ドル)、ロシア(+六〇八億ドル)、ルクセンブルグ(+二一一億ドル)、香港(+三二八億ドル)、台湾(+三六八億ドル)、スイス(+二一八億ドル)、ドイツ(+一〇三億ドル)、アイルランド(三五〇億ドル)、シンガポール(+九〇億ドル)、インド(二〇八億ドル)、韓国(−一〇億ドル)、メキシコ(−八〇億ドル)、トルコ(−一億ドル)、ノルウェー(一〇八億ドル)、タイ(−六〇億ドル)、フランス(+二五九億ドル)、イスラエル(+一三七億ドル)、エジプト(+六〇億ドル)、イタリア(+五五億ドル)、オランダ(+七億ドル)、ベルギー(+三三億ドル)チリ(+三六億ドル)、スウェーデン(−二億ドル)、マレーシア(+三一億ドル)、コロンビア(+四三億ドル)、フィリピン(++二八億ドル)、カナダ(−一八八億ドル)、その他(+四〇一億ドル)。
ほとんどの国が米国債保有を増やして米国財政を支援してることが明らかであるが、それにしても総じて先進諸国が米国債に冷たく、日中だけが飛び抜けて大きいことが分かる。